今更聞けないPMS(月経前症候群)って何?正しく理解しよう

生理前に何となく感じている心や体の不調。実はPMS(月経前症候群)かもしれません。
最近では、月経(生理)日だけでなくPMS(月経前症候群)の症状でも生理休暇の取得を可能とする企業が出てくるなど、何かと耳にする機会の増えたPMS。
正しく理解し、上手に対策をしましょう!

01 PMSとは

PMS(月経前症候群)とは、Premenstrual Syndrome の略で、月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。
     
生理がはじまると嘘のように症状が消えてしまうのもPMSの特徴のひとつです。
     
「なんだか調子が悪いな」と思っていたら生理がきて、「いつもの症状だったのか」とあとから気がつく人も多いようです。
     
PMSかどうかは、症状が出るのが月経前だけなのか、日常生活に影響があるかなどの状況をふまえ、3ヵ月以上続くような場合にPMSの可能性が高いと考えられます。

02 PMSの原因

PMSの原因ははっきりとは分かっていませんが、症状が排卵から月経までのあいだに繰り返されるという特徴から、排卵後に増加し月経をコントロールしているエストロゲン(卵胞ホルモンやプロゲステロン(黄体ホルモン)が原因として関わっていると考えられてきました。
2つのホルモンの分泌量や両方のバランスについて、PMSの患者とそうではない人で、ホルモンの血中濃度を比べてみると、両方に差がないことから、最近では、この2つを含むホルモンの影響の度合いがPMSの症状の出現に影響しているのではないか、とも考えられています。
これらのホルモンは本来、妊娠を助けるホルモンとして、子宮内膜を柔らかくしたり、体内に水分や栄養を溜め込んだり、妊婦が安静に過ごせるように眠気をきたすような生理的作用を担っています。
そのため、月経前の時期はからだがむくみやすくなったり、便秘がちになったり、また体温が上昇したりと、体の不調が生じやすいものです。
また、そうしたホルモンの関係に加えて、交感神経や副交感神経の機能が低下しているときやバランスの乱れているとき、忙しかったり、何らかの悩みを抱えていたりするときに症状が出やすいという人がいたり、身体症状ばかりが強く出たり、逆に精神症状のほうが強く出たりするなど、症状もさまざまであり、PMSの原因を1つに特定することは難しく、いくつもの要因が影響し合っていると考えられています。

03 PMSの症状

PMSは症状が軽めの人もいれば、日常生活に大きな支障をきたしている人もいますし、PMSよりもさらに精神症状が強く出るPMDD(月経前不快気分障害)の人もいます。
また、約1ヶ月の月経周期の間にもホルモンは劇的に変動しているため、月経、卵胞期、排卵期、黄体期それぞれのタイミングでも症状が異なります。
20~49歳の日本人女性1187人を対象に行われた調査(対象者1187人中25人はデータが揃わず除外)では、「PMSの症状なし」と回答した人を含む対象者全体の7~8割の人が、多かれ少なかれPMS特有の身体的、精神的な症状を感じています。
※ Gynecol Endocrinol:29(1): 67-73, 2013

症状が月経周期にあわせたものだが、PMSではない疾患

①月経困難症
立ち上がれないほど月経中に腹痛があり、下痢や吐き気など日常生活が送れないほどの不調。月経中の症状は「月経困難症」と呼ばれ、PMSとは区別されます。
②月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)
PMSの症状の中でも精神症状が重く、自制困難で日常生活が送れないほど深刻なもの。
③更年期障害
45歳ごろから55歳ごろの女性にみられ、のぼせなどPMSと似たような症状があるため、更年期障害とPMSの症状を区別しにくいものの、20代~30代が中心となるPMSとは区別されます。

04 PMSとライフステージ

月経周期と連動するPMSは、月経が始まる思春期頃から症状が出始める人もいます。
月経は、高学年の小学生、中学生のころに多くの人が始まりますが、はじめのうちは月経も不順なことが多く、女性ホルモンの働きが安定するのは18歳ごろです。
また40代半ばごろになると女性は更年期に入り、月経(生理)も不順になり、やがて閉経を迎えます。
PMSは、年齢とともに月経の回数を重ねることで、症状が強くなっていく傾向があるともいわれており、性成熟期とよばれる18歳から45歳の間は、女性が妊娠・出産するために適した時期である反面、女性を悩ます一面ももち合わせており、PMSの症状はこの時期によく現れます。
また、PMSの症状は更年期の症状と似ていますが、PMSは20~30代を中心に多く見られ、生理周期も卵巣機能も正常な人に起こります。
PMSの中心年代である20代〜30代ですが、その症状は年代のほか、妊娠・出産経験、子育て、仕事の有無によっても異なる傾向があると考えられています。
20代は、乳房のはり、下腹部痛や腰痛など、身体症状が強く出る傾向にあり、30代になると、20代の症状に加えて、精神的に不安定になる、イライラする、八つ当たりをしてしまうなど、精神症状が強く出るようになってきます。
こうした傾向は、仕事や子育てなどとにかく忙しく、多くのストレスを感じてしまうことで、症状を重くしてしまうということも要因と考えられています。

05 PMSの改善方法

日常生活にも大きな支障がある場合には、改善に向けて、婦人科などでの専門的な治療を受けることも検討する必要があります。
婦人科などでは、まずカウンセリングや生活指導、運動療法などが行われ、必要に応じて、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬などのホルモン療法で症状を和らげることも検討されます。
また、PMSの症状を和らげるには、PMSについて正しく知って、自分の症状を把握することが改善に向けた第一歩です。
いつ、どのような症状が、どの程度出るのか、記録をすることにより、「原因が分からない不調」から「PMSによる不調」だと認識し、それだけでも症状が軽くなる場合があります。
※心身医学: 49(11):1163-1170,2009
そうした正しい理解とともに、生活習慣を省みることが大切です。
「PMSの原因」のとおり、PMSの原因を1つに特定することは難しく、生活習慣や精神状態、自分をとり巻く環境の影響など、いくつもの要因が影響し合っていると考えられています。
そのため、普段の生活のなかで、規則正しい生活、十分な睡眠、禁煙や適度な運動などに取り組むことがPMS改善につながると考えられています。
※ 最新女性心身医学;本庄英雄監修, 日本女性心身医学会編, ぱーそん書房:158-169, 2015
あわせて読みたい