女性ホルモンの量は妊娠・出産の過程で大きく変化します。
妊娠すると女性ホルモンの値が上がっていきますが、出産を機に急激に減少し、0に近い値まで下がってしまいます。
女性ホルモンの量は心と身体の健康に大きく影響しており、様々な症状を引き起こします。
産後うつや様々なトラブルを防ぎ産後を健やかに過ごすため、ホルモン値がどのように変化するのか、またどう対処したら良いのか学んでいきましょう。
産後、女性ホルモンはほぼ0に 出産に伴う女性ホルモンの変化と対処法
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目次
1 そもそも女性ホルモンとは
エストロゲン(卵胞ホルモン)の働き
- 卵胞を成熟させ受精に備える
- 受精卵が子宮内膜に着床しやすいように、厚みのある子宮内膜をつくる
- 丸みを帯びた女性らしい体型をつくる
- 自律神経のバランスを整え血流を改善し、きめの細かい綺麗な肌をつくる
- 血管年齢を若く保ち、動脈硬化を防ぐ
- 骨にカルシウムを蓄える
プロゲステロン(黄体ホルモン)の働き
- 厚くなった子宮内膜を柔らかく維持して、受精卵が着床しやすい環境を整える
- 胎盤ができるまでの間、卵巣の機能を高める
- 受精しなかった場合、月経を始める
- おりものを出し細菌や雑菌の侵入を防ぐ
ホルモンとは、からだの様々な機能を調節する物質のことで、女性ホルモンは脳視床下部から指令を受けて卵巣でつくられます。
女性ホルモンには「エストロゲン」(卵胞ホルモン)と「プロゲステロン」(黄体ホルモン)の2種類があり、エストロゲンは妊娠の準備のため、プロゲステロンは妊娠の維持のためにはたらきます。
2 妊娠中の女性ホルモンの変化
妊娠に伴う女性ホルモン増加の影響
妊娠を継続させるために女性ホルモンが増加し、
つわりや眠気、気分の浮き沈み、便秘など様々な症状が出ます
妊娠すると、妊娠を維持していくために視床下部から指令が出て、女性ホルモンの量は大きく変化していきます。
着床後、妊娠初期(0〜15週)、中期・後期(16週〜39週)に分けてみていきましょう。
着床後
受精卵が子宮に着床し妊娠が成立すると、着床した部分から絨毛組織が発生し、胎盤を形成し始めます。
この胎盤から「hCG」(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。
hCGは通常妊娠時にのみ著しく生産されるホルモンであり、妊娠検査にも利用されます。
hCGのはたらきにより、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が促進され、妊娠を維持する事ができます。
妊娠初期(~15週)
hCGの量は妊娠8〜12週にピークを迎え、胎盤が完成する16週ごろになると減少していきます。
これは、つわりの時期と合致しており、hCGはつわりと深く関係していると考えられています。
hCGのはたらきでエストロゲンが急激に増えると吐き気や嘔吐などのつわりの要因となったり、プロゲステロンの増加も胸の張りや痛み、肌トラブルなどの要因になります。
またホルモンバランスが大きく変化することで気分の浮き沈みが激しくなることもあります。
妊娠中期・後期(16週〜)
妊娠中期になると、胎児に栄養を届けるためのホルモンであるhPL(ヒト胎盤ラクトゲン)が分泌されます。
週数が進むにつれて、エストロゲンとプロゲステロンの量はさらに増えていきます。
この頃になると、プロゲステロンは胎盤から分泌される様になります。
プロゲステロンを増やすことにより妊娠を維持し、早産になることを防いでいますが、強い眠気や便秘などのマイナートラブルも起きやすくなります。
母乳のために乳腺を発達させるプロラクチン(乳腺刺激ホルモン)も分泌が始まりますが、出産後まで母乳が出ないようプロゲステロンが働きを抑えています。
3 産後、女性ホルモンは急激に減少
妊娠・出産に伴う血中ホルモンの変動
妊娠を継続させるために増加していた女性ホルモンの分泌量は、出産が終わり胎盤が排出されると急激に減少し、産後1週間後にはほぼ0に近い値まで下がってしまいます。
一方プロゲステロンに抑えられていたプロラクチンの働きが活性化し、母乳が出始めます。1日に複数回授乳することで女性ホルモンの分泌が抑えられ、低い状態が続きます。
授乳中は女性ホルモンが低い状態が続きますが、母乳育児をしない場合は産後3〜6ヶ月後、母乳育児の場合は卒乳してから約3ヶ月後に正常なホルモンバランスに戻るといわれています。
4 産後の女性ホルモン減少に伴うトラブルと対処法
妊娠を維持するために増加していた女性ホルモンが、出産後胎盤の排出に伴い急激に減少することで、ホルモンバランスが崩れやすくなり様々なトラブルの原因になります。
イライラしたり気分の浮き沈みが激しくなる
女性ホルモンは脳の下垂体から指令を受け分泌されますが、同じ下垂体の指令でバランスを保っているのが自律神経です。
そのため女性ホルモンが急激に減りバランスを崩すと、自律神経にも影響が出るといわれています。
自律神経が乱れ交感神経が優位に傾くと、気が張っている状態になり、イライラしやすくなります。
こうした症状には個人差がありますが、およそ10〜15%の人が経験するといわれています。パートナーや家族に不安定な時期であることをあらかじめ説明しておいたり、地域の産後ケアサポートを活用するなどして負担を減らし、うまく対処していきましょう。
産後は寝不足が続き体内時計が乱れがちですが、カーテンを開け朝日を浴びることで体内時計がリセットされ自律神経が整いやすくなります。
他にもハーブティーやアロマの香りでリラックスしたり、できるだけ3食しっかり食事を取るなどして自律神経を整えることでイライラしやすい状態を緩和させることも期待できます。
不眠になる
産後は夜間の授乳などでまとまった睡眠をとることが難しくなりますが、母乳をあげることで分泌されるプロラクチンの作用により、赤ちゃんの睡眠リズムに適応しやすくなっています。
しかし、女性ホルモンの減少に伴う自律神経の乱れにより、交感神経が活発化してしまう事があり、不眠になりやすい状態でもあります。
不眠や過度な睡眠不足が続くと、産後うつにつながってしまいます。
自律神経を整えることで少しでも睡眠の質を上げること、また夜間の赤ちゃんのお世話は一人で対応せずに、パートナーや家族と交代制にするなど工夫していきましょう。
肌が荒れ、たるみやシワが目立つようになる
エストロゲンにはコラーゲンの育成を促し肌のハリや潤いを保つ役割があり、出産に伴いエストロゲンが減少すると、肌が乾燥したりシワやたるみが目立つようになってしまいます。
エストロゲンに似た作用を持つ美容成分をスキンケアに取り入れることで、エストロゲンが減ってしまうことで起きる肌の不調を軽減することが期待できます。
デリケートゾーンのトラブルが起きやすくなる
産後エストロゲンが急激に減少すると、肌と同じようにデリケートゾーンも乾燥しやすくなります。
膣内が乾燥すると痒みがでてきたり、性交痛が気になるようになってしまいます。
また、膣内の自浄作用を保っているラクトバチルス菌などの善玉菌は、エストロゲンが作り出すグリコーゲンを餌にしているため、エストロゲンが減少するのに伴って減少してしまいます。
ラクトバチルス菌が減ると膣内のpHバランスが崩れてしまい、自浄作用が弱まってしまうため細菌や雑菌に感染しやすくなり、膣炎などトラブルの原因となります。
膣内に潤いを与え、ラクトバチルス菌を補うことのできるセラムなどを使用することで、乾燥や様々なトラブルを予防する事が期待できます。
産後は急激な女性ホルモンの変化があり、誰もが不安定になりがちな時期です。自分を責める事なく、原因と対処法を心得ておくこと、パートナーや家族にもあらかじめ理解を深めてもらうこと、また目的に合ったケアを行うことで、産後の健やかな生活につなげていきましょう。
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