抗菌薬でカンジダになる?腟内フローラとの関係

「抗菌薬を飲んだあと、デリケートゾーンが急にかゆくなった」「おりものが白くポロポロしている」。
そんな変化に戸惑ったことはありませんか。
抗菌薬は細菌による感染症を治療するために欠かせない薬ですが、服用後に外陰腟カンジダ症を発症する人がいます。※1 ※2
カンジダは外から入り込むとは限らず、もともと皮膚や口腔、消化管、腟などに存在し得る真菌です。
抗菌薬の影響で腟内フローラが変化すると、カンジダが増殖しやすい状態になることがあります。
なかでもラクトバチルス属は、乳酸をつくり、腟内の酸性環境を支える重要な存在です。※5
この記事では、

・抗菌薬とカンジダの関係
・腟内フローラとラクトバチルスの働き
・カンジダになりやすい人
・毎日できるデリケートゾーンケア
・婦人科へ相談したいサイン

について解説します。
抗菌薬は自己判断で中断せず、気になる症状があるときは処方した医師や婦人科、薬剤師へ相談してください。

1. カンジダとは

カンジダは体に存在することがある真菌

カンジダは細菌ではなく、真菌、つまりカビの仲間です。
代表的な原因菌は Candida albicans ですが、別の菌種が関わることもあります。
健康な人の皮膚や粘膜にも存在することがあり、検査でカンジダが見つかったからといって、症状がなければ直ちに治療が必要とは限りません。
外陰部のかゆみや赤み、腟の痛みなどの症状と、診察・検査の結果を合わせて診断します。※1
また、外陰腟カンジダ症は一般に性感染症として扱われる病気ではありません。
性行為をきっかけに刺激が加わり、症状に気づくことはありますが、発症したからといって「パートナーから感染した」と決めつける必要はありません。※1

代表的な症状と似ている病気

外陰腟カンジダ症では、次のような症状がみられることがあります。
・外陰部の強いかゆみ
・ヒリヒリとした刺激感
・赤みや腫れ
・排尿時の痛み
・性交時の痛み
・白く濁ったおりもの
・酒かす状、カッテージチーズ状のおりもの
※1 ※6
ただし、かゆみやおりものの変化だけでカンジダと断定することはできません。
似た症状が出るものには、
・細菌性腟症
・トリコモナス症
・その他の性感染症
・接触皮膚炎
・外陰部の皮膚疾患
などがあります。
自己診断で治療を始めると、別の原因への対応が遅れることがあるため注意が必要です。

2. 抗菌薬でカンジダになりやすい理由

抗菌薬は細菌に作用する薬

抗菌薬は、細菌が原因となる感染症を治療する薬です。
一方、カンジダは真菌です。そのため、一般的な抗菌薬によってカンジダそのものが発生するわけではありません。
ポイントは、抗菌薬が腟内に共存する細菌にも影響を与えることがあるという点です。
抗菌薬によって腟内に存在する細菌の構成が変化すると、それまで保たれていた微生物同士のバランスも変わります。
その結果、もともと存在していたカンジダが増殖し、症状につながることがあります。
抗菌薬の使用が外陰腟カンジダ症の短期的なリスク因子となることは、観察研究でも示されています。※3 ※4

ラクトバチルスへの影響が腟内環境を変える

健康な性成熟期の女性の腟内では、ラクトバチルス属が優位に存在することが多くあります。
ラクトバチルス属には、
・乳酸を産生する
・腟内の酸性環境を支える
・腟粘膜や免疫機能とともに腟内環境の安定に関わる
といった役割があります。※5
抗菌薬の種類や服用期間、本人の体質や既往歴によって影響は異なりますが、ラクトバチルスを含む腟内細菌叢の構成が変化すると、カンジダが増えやすい条件が生じる可能性があります。
ただし、抗菌薬を飲めば必ずカンジダになるわけではありません。
服用中から服用後にかけて違和感が出た場合は、
・いつ抗菌薬を飲み始めたか
・いつ症状が出たか
・どのような症状があるか
を記録しておくと、受診時に役立ちます。

処方された抗菌薬は自己判断でやめない

カンジダが心配だからといって、処方された抗菌薬を途中で減らしたり、自己判断で中止したりするのは避けましょう。
元の感染症が十分に治らないだけでなく、薬剤耐性の問題につながる可能性もあります。
過去に抗菌薬を服用したあとでカンジダを繰り返したことがある場合は、処方時にその経験を医師へ伝えておきましょう。
症状が出た場合の相談先や対応について、あらかじめ確認できます。

3. 腟内フローラとラクトバチルスの関係

腟内フローラは女性の体とともに変化する

腟内フローラとは、腟内に存在する微生物の集まりを指します。
その状態は常に一定ではなく、
・月経周期
・妊娠
・女性ホルモン
・年齢
・性行為
・薬剤の使用
など、さまざまな要因によって変化します。
腟粘膜に蓄えられたグリコーゲンは分解され、ラクトバチルスが乳酸をつくるための基盤になります。
エストロゲンの変化も、この仕組みを介して腟内環境に関係しています。※5

ラクトバチルスは健やかな腟内環境を支える

ラクトバチルス属は乳酸の産生を通じて腟内を酸性に保ち、腟粘膜や免疫機能と協力しながら健やかな環境を支えています。※5
毎日のフェムケアでラクトバチルスに着目することは、腟内環境について知り、自分の体の小さな変化に気づくきっかけになります。
Racine が展開するようなラクトバチルス由来成分配合のセラムやスプレーは、商品の使用部位と使用方法を守り、清潔やうるおいを保つための日常のケアとして取り入れましょう。
ただし、化粧品や日用品はカンジダを診断・治療するものではありません。
症状があるときはセルフケア用品だけで対処しようとせず、必要に応じて医療機関へ相談することが大切です。

4. カンジダを発症しやすい人

抗菌薬の使用や過去の発症歴がある人

抗菌薬の服用は、外陰腟カンジダ症の誘因として知られています。
特に、
・抗菌薬を飲んだあとにカンジダ症状が出たことがある
・過去にカンジダを繰り返している
という人は、服用中から服用後の変化に注意するとよいでしょう。
日本産婦人科医会も、再発や治療後に症状が続く場合の誘因として、
・抗菌薬の内服
・妊娠
・糖尿病
・免疫抑制薬の使用
などを挙げています。※2

妊娠中や血糖コントロールに課題がある人

妊娠中はホルモン環境が変化し、外陰腟カンジダ症がみられやすくなります。
また、
・血糖コントロールが不十分な糖尿病
・免疫機能が低下している状態
・ステロイドを使用している
・免疫抑制薬を使用している
といった場合には、発症や難治化のリスクが高まることがあります。※1 ※2
これらに当てはまる場合は、自己判断で市販薬を使う前に医療機関へ相談してください。

蒸れや刺激が続いている人

汗やおりもの、濡れた衣類などで外陰部の湿った状態が続くと、不快感や皮膚刺激が起こりやすくなります。
また、
・締めつけの強い下着
・香料の強い洗浄料
・洗いすぎ
・腟内洗浄
なども、外陰部や腟内の環境に負担をかける場合があります。
蒸れや刺激を減らすことはカンジダそのものの治療ではありませんが、日常のコンディションを整えるための基本的なケアです。

5. 毎日できるデリケートゾーンケア

洗うのは外陰部を中心にやさしく

基本的に洗うのは、外側の外陰部です。
洗うときは、
・洗浄料をよく泡立てる
・手でやさしくなじませる
・ぬるま湯で丁寧に流す
ことを意識しましょう。
一方で、
・ナイロンタオルなどでゴシゴシこする
・熱いお湯を使う
・香りの強い製品で何度も洗う
・腟の内部まで洗う
といったケアは避けましょう。
腟には自浄作用があるため、通常のケアで腟の内部まで洗う必要はありません。
デリケートゾーン用として設計された弱酸性の洗浄料は、外陰部をやさしく洗うための選択肢のひとつです。
ただし、洗浄料だけでにおいやおりものの異常を解決しようとしないことも大切です。
急な変化がある場合は、まず原因を確認しましょう。

乾燥と摩擦を避けてうるおいを保つ

洗ったあとは、清潔なタオルで押さえるように水分を取ります。
乾燥や摩擦が気になる場合は、外陰部への使用を想定した保湿アイテムを、使用方法に従って取り入れましょう。
日常生活では、
・通気性のよい下着を選ぶ
・汗をかいた衣類は早めに着替える
・濡れた水着を長時間着たままにしない
・外陰部を強くこすらない
といったことも、蒸れや刺激を減らす助けになります。

ラクトバチルスに着目したケアを習慣にする

腟内環境を支えるラクトバチルスの役割を知ると、デリケートゾーンを顔や体と同じように毎日いたわる理由も見えてきます。
ラクトバチルス由来成分を配合したセラムやスプレーなど、使用部位に合ったアイテムを選び、清潔とうるおいを保つための日常のケアに取り入れるのもひとつの方法です。
新しい製品を使うときは、
・使用できる部位
・使用量
・使用頻度
・注意事項
を確認しましょう。
刺激、赤み、かゆみが出た場合は使用を中止してください。
すでに強い症状があるときは、新しいケア用品を次々と試すよりも、婦人科で原因を確認することが大切です。

症状と薬の記録を残す

抗菌薬を飲んだあとに症状が出た場合は、次の情報をメモしておくと医師や薬剤師に経過を伝えやすくなります。
・抗菌薬の名称
・抗菌薬を飲み始めた日
・症状が出た日
・かゆみや痛みの程度
・おりものの色や状態
・市販薬の使用歴
・月経との前後関係
・同じ症状を何回繰り返したか
診察時にこれらを伝えることで、症状の原因を判断する手がかりになります。

6. セルフケアだけをおすすめしないケース

初めての症状やカンジダらしくない症状

初めて外陰部のかゆみやおりものの変化が出た場合は、婦人科で診断を受けましょう。
特に、
・黄色や緑色のおりもの
・強い悪臭
・不正出血
・発熱
・下腹部痛
・水疱
・潰瘍
などがある場合は、カンジダ以外の感染症や病気も考えられます。
カンジダ用の市販薬だけで様子を見ず、早めに受診しましょう。

強い症状や繰り返す症状

次のような場合も診察を受けることが大切です。
・眠れないほどかゆい
・強い腫れや痛みがある
・皮膚に亀裂がある
・治療しても症状が続く
・短期間で何度も再発する
・市販薬を使用しても改善しない
CDC は、治療後 2 か月未満で症状が再び出た場合や、市販薬を使用しても症状が続く場合には、診察と検査を受けるよう勧めています。※1
再発性外陰腟カンジダ症では、原因菌の種類や薬剤への反応を確認する検査が必要になる場合があります。
また、再発を繰り返す背景に糖尿病などがないかを確認することもあります。※1 ※2

妊娠中や基礎疾患がある場合

以下に当てはまる場合は、自己判断で薬を選ばず医師へ相談しましょう。
・妊娠中
・糖尿病の治療中
・免疫機能に関わる病気がある
・ステロイドを使用している
・免疫抑制薬を使用している
妊娠中に使用できる薬や投与方法には注意が必要です。※1

市販薬を使えるのは再発と確認できる場合

日本で市販されている腟カンジダ治療薬のなかには、過去に医師から腟カンジダと診断・治療を受けた人の再発を対象とするものがあります。
使用には、
・年齢
・妊娠の可能性
・症状
・過去に医師の診断を受けたか
・前回の発症からの期間
などの条件があります。
購入時は薬剤師へ相談し、添付文書に従って使用してください。※6

7. まとめ

抗菌薬は細菌感染症の治療に必要な薬ですが、腟内細菌叢に影響し、外陰腟カンジダ症が起こりやすくなることがあります。
カンジダは真菌であり、抗菌薬が直接カンジダを生み出すわけではありません。
抗菌薬によってラクトバチルスを含む腟内フローラが変化し、もともと存在していたカンジダが増殖しやすくなることがあると理解するとよいでしょう。
ラクトバチルスは乳酸を産生し、酸性の腟内環境と健やかな状態を支える重要な存在です。
毎日のケアでは、
・外陰部をやさしく洗う
・洗いすぎを避ける
・乾燥や摩擦を防ぐ
・蒸れた状態を長時間続けない
・ラクトバチルス由来成分に着目したセラムやスプレーを清潔・保湿のために取り入れる
といったことを意識してみましょう。
一方で、セルフケア用品はカンジダの診断や治療をするものではありません。
初めての症状、強い痛みやかゆみ、いつもと異なるおりもの、繰り返す症状がある場合は婦人科へ相談してください。
また、抗菌薬は自己判断で中断せず、カンジダが疑われる症状が出た場合は処方した医師にも伝えましょう。

参考文献

※1
Centers for Disease Control and Prevention. Vulvovaginal Candidiasis. STI Treatment Guidelines, 2021.
https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/candidiasis.htm
※2
日本産婦人科医会. 外陰腟カンジダ症で治療後にも継続する症状への対応は. 産婦人科診療 こんなときどうする No.116, 2026.
https://www.jaog.or.jp/note/no116_3_3/
※3
Spinillo A, et al. Effect of antibiotic use on the prevalence of symptomatic vulvovaginal candidiasis. Am J Obstet Gynecol. 1999;180(1 Pt 1):14-17.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9914570/
※4
Xu J, et al. Effect of Antibiotics on Vulvovaginal Candidiasis: A MetroNet Study. J Am Board Fam Med. 2008;21(4):261-268.
https://www.jabfm.org/content/21/4/261
※5
Amabebe E, Anumba DOC. The Vaginal Microenvironment: The Physiologic Role of Lactobacilli. Front Med (Lausanne). 2018;5:181.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29951482/
※6
厚生労働省. 腟カンジダ再発治療薬 メンソレータム フレディ CC1A 腟錠 添付文書.
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001172384.pdf
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